紙と鉱質インク

これらのスケッチは明暗さまざまな心象を(そのとおり)写実した言語記録(紙と鉱質インク)です

【2019年】小島秀夫『デス・ストランディング』の最新トレーラーを考える

公式ツイッター事前に告知されていたとおり、デス・ストランディングのトレーラーが公開されたので、例のごとく考えてみたいと思います。2019年11月8日(金)発売予定。以前、小島さんがオリンピック前にリリースしたいと語っていたので宣言通り。いよいよ、ですね。

『DEATH STRANDING (デス・ストランディング)』発売日告知 2019トレーラー - 4K - YouTube

 

使われた楽曲。

https://twitter.com/Kojima_Hideo/status/1133767252631740416

Apocalyptica - Path - YouTube

 

今回のトレーラーはむしろ謎が深まるばかりだった。ほとんど唯一と言っていい、わずかに判明した重要な情報は赤ん坊に関する事柄、つまり、赤ん坊の名前「Bridge Baby(BB)」と、other side「あの世」の存在と赤ん坊が密接に関係していることだけだ。

今回のトレーラーは、すべてのカットが誰かのまばたきによって場面が切り替わる仕様になっている。この世界を眺める傍観者のような、まるで神のような、視点。おそらく赤ん坊の目を通して見ている。

そして動画の最後で、クリフにわざわざ「月にだって行ける」というセリフを言わせていることからも、この赤ん坊は2001年宇宙の旅の「スターチャイルド」と関連させてみるべきかもしれない。これは(5:39)や(5:32)の精神生命体のような赤ん坊の姿をみても同じことが言えるかもしれない。

(追記)【公式ツイッターのツイートを追加】

例のごとく赤ん坊がサムズアップするところからトレーラーは進行する。いままでの動画では、この赤ん坊の正体についてほとんど触れられてこなかった。しかし今回は少し違う。赤ん坊から離れるようにカメラが移動するのではなく、赤ん坊の口へカメラがダイブするのだ!この赤ん坊を理解することは、すなわち、「デス・ストランディング」というゲームを理解することに繋がっている。

「ゲームのメカニズムでもありますし、同時にテーマにもストーリーにも関わっています。赤ちゃんはゲームのメカニズムの要素でもありますし、テーマでも、ストーリーでも重要になります」。IGNのインタビューより

セリフから伺えるのは、どうやら赤ん坊が収納されているポッドにプラグを挿入するとother side(向こう側の世界=あの世)と「繋がる」というのだ。何を言ってるかわからねえと思うga…

つまりこの赤ん坊と「繋がり」をもつ者は、なぜかはわからないが、「この世」と「あの世」の境界を曖昧にすることができる。つまり、「死者」と「生者」の境界が曖昧な存在になれるのかもしれない。これはサムや彼の仲間の肩に付けられた探知機と赤ん坊のポッドを接続することでBTを可視化できるようになることとも関連がある。生者にとって見ればまるでBTという存在は目に見えない幽霊のようであり、逆に死者にとって見ればBTは転生したゾンビだ。この転生というのは、ゲーム的文脈で言えば、一度死んでコンティニューしたキャラクターに相当するだろう。赤ん坊と繋がっている限り、この世とあの世を隔てることは困難であり、日常で使われる不可逆な「生」「死」の概念が適用できなくなる。

では、帰還者と呼ばれていたサムが赤ん坊を持った状態で死ぬとどうなるのか?前回のトレーラーで対消滅の爆発に巻き込まれたあと、サムは精神世界(今回の動画で言う「あの世」)に飛ばされ、元の世界に戻ることができたが口から黒い泥を吐き出していた。つまりサムが帰還するためには、代償として赤ん坊を黒い泥に変えなければならないのではないか。ゲーム的文脈で言えば、マ○オの残機の概念に近いものかもしれない。

では、サムが赤ん坊を持たない状態で「この世」を離れ「あの世」に向かうとどうなるのか。まったくの憶測だが、(6:25)の青白くなったサムと関係があるかもしれない。彼は悲痛な表情でピストルをこめかみに当て、自殺を決行しようとしている。このシーンを、サムが世界を繋ぐことを諦めたシーンとして解釈すれば、いわばゲームオーバーという意味になるのだろう。世界を再び繋ごうというサムの意志が何らかの形で消失したとき、それこそ「デス・ストランディング」の本当のゲームオーバーと言えるからだ。キャラクターの肉体的な死ではなく、精神的な死。そのようなものが考えられるのではないか。

それではプレイヤーが死んでゲームの外に出されるということはないのだろうか? それはない、と小島監督は明言した。

「生と死が一つのテーマになっているので、ゲームで死んだということをちゃんとわかって欲しいと思っています」IGNのインタビューより

では、帰還者ではない人々はどうか。赤ん坊の入ったカプセルを投げ捨てて自死を図ろうとする仲間の姿を思い返せば、BBが自身の生命よりも重要な存在であるためにサムに投げ渡したと考えられるかもしれない。しかしこれは、小島さんが思い描いた「繋がり」の形だとは思えない。

(5:41)の彼岸の右側に防護服を着用した人がいる。おそらくBridge Babyなしで「あの世」に逝った人々のようだ。その情景はまるで彼岸への渡航、煉獄だ。

 

マッツさんこと、黒泥まみれのクリフの腹部には黄金に光る十字の傷跡がある(4:59)。これは初期の動画のサムの腹部の十字の傷跡に似ている。

クリフはドックタグを身に着けており(5:00)、直前に戦場のような場所とともに「地獄に繋がれた者たち[Those bound to Hedes]」という文面が表示されることから、クリフは戦死した兵士であることが伺える。また地獄の黙示録のオマージュと思われるシーンがある。

今回の動画の冒頭で、赤ん坊をあやすクリフが「私はいつも繋がっている[I'll always be with you]」という発言とother side(あの世)発言と絡めて考えるなら、クリフが戦死した兵士であると考えるのが妥当だろう。

クリフは髑髏の兵士を繋がりによって使役している。髑髏の兵士は思考することはできない。彼らは「繋がりを絶てないものたち[Those who cannot break the connection]」だ。

「無理やり世界を繋いでもまた綻びは生まれる」とサムは発言することから、クリフが実行している強制的な繋がりは、サムたちが目指す繋がりと対立するだろう。

最後にクリフが持っている本の背表紙におそらく本のタイトルが書いてあるが、読み取るのは困難だ。

 

  • 以前のトレーラーに出てきた触手を生やした怪物のような姿のBTが、日本語吹替版に登場する。攻撃を受けると背負っている箱が赤く発光する。また、怪物にサムが捉えられると、爆発的な光を放った。これは以前登場した、BTによる対消滅だろう。
  • 初期のトレーラーから登場するサムのネックレスには不思議な力があるようだ。数式を調べると(5:34)、量子テレポーテーションシュワルツシルト半径などが検索に引っかかる。SF要素なので割愛。
  • 以前のトレーラーで登場した写真と誰かの年老いた手がおおきく映されている(0:42)。写真には時雨によって劣化して顔が見えない身ごもった女性と若いサム、そして老いたアメリらしき人物合わせて三人写っている。
  • アメリに似たブリジッドという人物はかつて大統領であったがいまは病床に伏している。どうやらBT?の襲来によって人類は絶滅の危機に瀕しているようだ。前回の動画の「絶滅因子」と関係がありそうだ。
  •  前々回のトレーラーで登場したバイクのような乗り物などのメカニクスが多数確認できる。これらはブリッジBridgeなどの組織によって、支給されたものであることが今回の動画で強調されている(1:26-1:31)。
  • 初めてUIが確認できた(1:47)。6ヶ所にあらかじめセットすることで、自由に装備選択できるようだ。未装備、ロープ、銃(SCAR?)、はしご、クライミングアンカー、フラッシュバン?などが確認できる。
  • 「はしごは10mの長さまで伸びる携帯式のもので、傾斜を越えたり川を渡るのに使用する。」「傾斜や崖を登り降りできるアンカーポイントを作成するために地面に打ち込まれる杭。アンカーに付けられるロープは最長30m」とある。
  • エッジ・ノットシティ[Edge Knot City]という反体制派のテロリスト組織の存在が初解禁。都市連合UCAの加盟を拒否し独立自治を要求しているという。黄金仮面の男、ヒッグスは分離過激派の武装集団のリーダー格のひとりのようだ。BTとの関係性が気になる。
  • 「未来を拒絶する者たち[Those who resist the future]」というテロップが表示されたあと、黄色い防護服を着た武装集団「ミュール」にサムは襲われる。サムが襲われる直前に、広範囲に広がるオレンジ色の探知に引っかかってしまったようだ。攻撃を受けるとアイテム(おそらく配達物)を落としてしまい、逆に敵を攻撃すると水しぶきのようなエフェクトが出る(3:18)。撃破するとアイテム(セラミックと書かれた箱)をドロップする。奪った箱で殴ったり、乗り物を奪って逃走することもできるようだ。
  • 改めてBTはこちらを視覚的に捉えているわけではなく、息をひそめずにBTの正面を通過すると発見されるようだ(4:22)。
  • 前回のトレーラーで運んでいた死体を焼却するシーンがある(5:31)。これは前回の記事で考察した「正しい」埋葬仮説をより確からしいものにしている。
  • 驚くことに(5:26)をよく見ると空中に浮かぶBB?とママーとが、へその緒のようなもので繋がっているのが確認できる。彼女はどうやらBBと、母と子のように、インタラクションを図ることができるようだ。おそらく彼女はBBを研究する人物で、BBの生みの親なのかもしれない。あるいは研究のなかでBBに対して母性に似た態度で接するようになりその姿からママーと呼ばれているのかもしれない。

 

ヒッグスが理解した「デス・ストランディング」とは何か。

結局、BTや時雨とは何なのか。

クリフと赤ん坊マネキンの関係は?

アメリはなぜ血のように赤い涙を流すのか。

デッドマンは存在感が薄いと言う意味の「デッド」マンなのか。

 

 

気づいたことがあれば追記したい。

(追記)記事文の順番を変更

 

 前回の記事

 

monpanache.hatenablog.com

 

 

monpanache.hatenablog.com