本革のブックカバーを買ってしまった
本革のブックカバーを買ってしまった。
オリーブの栃木レザー。シュリンクされていて手に馴染む。
『文字入れできますが、いかが致しましょう?』
そんなことを聞かれるもんだから、
しばし悩み、
『…「K」でお願いします』
おそらく普通は名前を入れたり、日付を入れたりするのだろう
驚いた顔
最近よく読む本のせいだろう
別に誕生日でもない。なにか特別な事があったわけでもない。
足を止めた先に革専門店があって、財布に少しばかりの猶予があった。
ただそれだけ。
世界の中にある物体Kの存在を知覚しただけだ。
私の世界の可能性に留まっていた物体Kの存在が、
一つの対象の像として、現実化しただけのお話なのだ。
中島義道『不在の哲学』
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