紙と鉱質インク

これらのスケッチは明暗さまざまな心象を(そのとおり)写実した言語記録(紙と鉱質インク)です

アニメ『Just Because』についての断片的ノート2

Just Because!10話2017/12/09
私が見たかった一つの到達点であった。彼らの幼少時代、青春は終わりを迎え、次のステージへと進んでいく。
森川葉月がずっと気にかけていた相馬陽斗に対する真剣な交際関係を打ち明け、互いに想いあうための急がない付き合いをはじめた。高校生活が終わりを迎えつつある中での、急ぎすぎた恋を緩和させる森川の態度は、その容姿も相まって一人の女性としての立ち振る舞いであった。彼女なりの交際に対する真剣な態度の表明を聞いた相馬も、はじめは子供らしさを保った態度であったが、その真意を聞いて森川の気持ちにこたえる形で一人の男性としての気構えとなった。
あの自転車をこぐシーンにはチョコという青春行事の成果物とは反対の、交際への決意をより固める相馬らしい立ち振る舞いといえる。
 
そして小宮の子供らしい考えから来た山盛りお守りのプレゼントには小宮らしい不器用で、けれど相手に対する真剣な態度の表れでもあり、好きな人が真剣なことを、たとえ自分が不利になることであろうとも、応援するというまさに公式サイトにあるような標語(あいつを好きな君の横顔が、たまらなく綺麗だったから)のとおりその複雑な恋愛模様を描いている。
Just Because!11話2017/12/26
登場人物たちのうちで終わってしまった青春の残り香を、これまで歩んできた友たちとの交流(lineアプリのトーク場面、受験終わりの祝賀雪合戦)を通して描いていく実写的シナリオ。
泉と夏目のゆくすえを周囲が見守る中、どうやら片思いの行き違いが発見される。
大人の顔つきとなった森川と相馬の新しい関係も始まり、終わろうとする青春の世界で少し浮いて見えるのは気のせいだろうか。
 
10話で到達点を通り過ぎてしまったあたり、後日談の様相がある今回の11話。
この先の展開は物語の終結にあてられるため、「青春のおわり、新たな人生の始まり」というテーマはすでに完結している。あとは見守るのみだ。
 
一つ気がかりなのは小宮のゆくすえだろう。
彼女は結局降られることが確定しているキャラなので、最後にどのような結末がまっているのか、そこだけが気がかりだ。
Just Because!12話2017/12/31
小宮恵那の告白シーンは結果を知っていてもこたえるものがある。
小宮の入賞した写真が、自分がレンズ越しに好きな人を見つめるまなざしそのものだったのは大変いいシナリオだった。彼の姿は小宮だけしか見ることはできない。好きな人をファインダー越しに独り占めしているのだ。好きな人を見るその横顔の綺麗さが入賞するとは、『あいつを好きな君の横顔が、たまらなく綺麗だったから』を体現している。
泉に秘められていた「好き」の内に宿る精神に背中を押され森川に告白した相馬が、今度はピッチャーを交代し、泉にエールを送る。その最後の青春風景の美しさに心打たれる。飛行機雲に乗ってどこまでも飛んでいくボール。泉はまっすぐに駆け出していく。飛行機雲を道しるべとして、息のつづく限りどこまでも走っていく。
夏目のlineに返信はなく、また夏目も泉が待っていない裏手の丘でため息を一つ。一時は離れた二人は偶然にも再会を果たし、そしてまた離れていく。少し大人になった二人は、学内で再び再会を果たし素直な気持ちを伝えあう。
新しい物語が幕を開けるが、それはまた別のお話。
じつに愉快だ。